恋に落ちたのは一瞬

湯神←ちひろ


 恋に落ちるということが、これほどまでに厄介なことだとは思ってもみなかった。


 湯神くんが好き……。

 そう自覚したのはいつだったかさえも記憶にないほど、あっけなく恋に落ちたと自覚してからというもの、これまで普通だったことが普通と感じられなくなってしまった。

 二人で出かけるなんて何度もやってきたことなのに、「本当はこれってデートなのでは……?」と意識してしまったり。
 居酒屋で変わったお酒を頼み、「一口くれ」と言われると、前は普通に渡していたグラスに一瞬躊躇ってしまったり。
 突然、「間接キス」という単語が浮かんだり。
 二人の時間を楽しいという感情よりも、戸惑いの方が上回ったり。
 かと思えば、別れ際が妙に寂しく感じ、家に着くなり湯神くんを恋しく感じたり。


「恋の病」なんて言葉を耳にしたことがあるが、まさに今の私にぴったりだな、なんて思う。
 しかし、いつも通りの湯神くんを見ていると、『私と同じならいいのにな』という願いとは程遠い。


「あぁ~~~恋にうだうだしてる湯神くんを見てみた~~~い!」


 自宅のリビングで大の字に寝転びながら、控えめにそう叫ぶ。


 私のうだうだはいつまで続くのか。
 私の恋は実るのか。


 ……それを考えて、私は途方に暮れるのだった。





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思いつきで書いた超短文でした。(お題1より)